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歴史を伝えてくれる唐人墓

美しい外観に隠された悲しい歴史を語る「唐人墓」

石垣島の観音崎にある「唐人墓」は、1852年に発生したロバート・バウン号事件の犠牲者の魂を慰めるため、1971年に建立された中国式のお墓・慰霊碑です。
ロバート・バウン号事件とは、中国人をだまして奴隷としてアメリカへ連れて行こうとした商船バウン号で起こった事件です。

アメリカ人は乗船した400人の中国人に対して、弁髪を切り落としたり、胸に焼きごて当てて焼き印をつけるなどした上に、労働力とならない病人は海に突き落とすなど非人道的な扱いをしました。
奴隷として扱われることを知った中国人たちはこれに反抗し、アメリカ人の船長や船員を殺害するなどの暴動をおこしたのです。
その後、船の操縦がうまくいかず、300人の中国人が石垣島に漂着しました。

石垣島の人たちは詳しい事情が分からず、彼らを収容したそうです。
しかしその後、この事件を知ったイギリス船などが石垣島に報復にやって来ました。
白人に抵抗したとして、中国人を殺害・捕縛するなどの暴行をはたらいたのです。

殺害や捕縛から逃れた中国人は琉球王国が保護しましたが、多数の人が病死や自殺、行方不明となっています。
石垣島の人たちは亡くなった人々を供養するために、石を積んでお墓を作ったといいます。
それらの石墓は三百唐人墓と呼ばれ、お墓の石がつい最近まで周辺に残っていたそうです。
その後1971年に、遺骨を集めて作られたのが唐人墓です。

唐人墓を訪れた感想

唐人墓は、具志堅用高記念館を過ぎて観音堂線を左折し、ホテルが並ぶ海岸線を進むと、右側に標識が見えてきます。
石垣島の中心地から車で15分ほどの距離です。

唐人墓はお墓ですが、日本とはまったく異なるデザインです。
屋根には赤や緑など色取り取りの色彩で彩られた鳳凰、中国の皇帝や文官、武将などの人々などで飾られています。
とても華やかできらびやかな建造物からは、人種差別による悲しい歴史があったことはなかなか想像できません。
しかし、唐人墓が建てられた意味を知った上で訪れると、外観が華やかなだけに悲しみが胸に染みます。

実際は楽しく遊ぶために訪れた石垣島なのに、「観光客である私が唐人墓を観光していいのだろうか?」と不安にもなりました。
でも、同行した友人が「平和の大切さや差別の歴史について改めて考えるきっかけになるから、一人でも多く訪れた方がいい」と語り、なるほどと納得した次第です。

沖縄は第二次大戦末期に民間人を巻き込んだ戦場となり、数多くの犠牲者を出した歴史があります。
平和の大切さを考える上で、重要な地域の1つといえるでしょう。
旅行に出掛けてまで、そんな深刻なことは考えたくないと思う方も多いかもしれません。
でも、旅のほんの一時だけでもいいので、唐人墓を訪れて平和の大切さをかみ締める時間を設けるのも、体験という意味では悪いことではないと思います。