離島がたくさんある長崎・・医師不足は深刻だった
長崎は日本国内で離島の数が最も多く、たくさんの素敵な島があります。
伊王島、福江島、壱岐島、宇久島、九十九島など、色々な島がありますが、離島が多いことで大きな問題となっていたのが医師不足でした。
離島はどの島でも医療についての問題がありますが、大小約600という島を有している長崎は医師不足がより深刻だったのです。
長崎の有人離島は55、その島々に長崎県の人口のうち、約12%「17万人」もの人々が暮らしています。
長崎県では離島医療の充実をはかろうと県政の中でも最重要課題として掲げ取り組んできました。
昭和40年代からずっと離島医療事業に取り組んでおり、実に40年以上もの間、離島医療システムについて考えてきたのです。
離島医療の拠点となった離島医療圏組合
県と離島が一体となって病院経営を行うことを目的とした離島医療圏組合は昭和43年、壱岐、五島、対馬という3つの大型離島の市町村によって設置されました。
この取組によって現在では、離島医療の拠点病院として合計9病院を経営しています。
日本ではどのエリアでも医師不足が深刻化していますが、長崎県ではすでに昭和45年から長崎県独自の取り組みとして奨学金制度があります。
長崎県医学修学資金貸与制度をスタートし、へき地医療や地域医療を充実化させようと自治医科大学も開学され、長い期間をかけて若い医師の育成を行ってきたのです。
画期的な離島医師養成システム
古くから行われてきた離島での医師育成システムは現在も継続されています。
長崎県の医学修学資金の貸与を受けている医学就学生、さらに自治医科大生の両方の人材に向けて、共通の研修プログラムが提供されているのも大きな特徴です。
このプログラムでは、離島の病院見学を初めワークショップ、ミーティングなど様々な内容となっています。
離島医療のプログラムは卒業後も長崎県養成医という形で継続され、各学生たちは離島の医療について知識をもった医師となっていくわけです。
この長きにわたる離島医療への地道な教育努力が実を結び、対馬、下五島、上五島という3つの地域で、心臓手術や脳外科手術、未熟児への対応といったいわゆる「高度医療以外」について、島の中で完結できるようになっています。
へき地医療センターのドクターバンク事業
質の高い医師育成プログラムですが、離島医師の確保について病院を主軸に行ってきたため、診療所での医師育成が置き去りになるという問題も起きました。
長崎県全体を見ると人口10万人当たりの医師数は全国平均を上回り(全国平均は209.8人)261.1人となっています。
しかし離島や半島部となると足りていない状態となってしまったのです。
そこで長崎県は離島診療所への常勤医確保のため、県独自の制作として長崎医療センター内に長崎県離島・へき地医療センターを作りました。
この離島・へき地医療センターの大きな役割といわれているのがドクターバンク事業です。
離島の市町から医師要請を受けた際、全国規模で公募し県職員として採用し、要請を受けた公立診療所へ医師を派遣するという取り組みが行われています。
この派遣は原則2年1単位という交代制で行われていますが、1年半勤務し本人が希望すれば残りの半年間は有給自主研究期間として利用できるというシステムも用意されています。
医師にとって離島で働くということは都市部で行われている最新医療情報、医療技術を身に着けられないといった不安もあるでしょう。
こうした不安を取り除くことにプラスして、離島生活に慣れない医師たちにリフレッシュしてもらおうというシステムです。
離島医療、医師不足について、医師個人が離島診療を支えるのではなく、離島・へき地医療センターというチームを組み、チーム全体で離島医療を支えることで、医師への肉体的、精神的な負担を取り除く画期的な取り組みです。
こうした取り組みが、全国各地の離島医療にいい影響を与えれば、少しずつでも離島の医療不安が解消されるのでないかと注目されています。